石窯の素材

石窯の床の下の素材選定(プロ用の本格石窯の場合)

家庭用の簡易石窯では考慮しなくても良い項目と思いますが、ここでは石窯の炉床よりも下の土台部分の素材について触れます。素材の選び方は石窯の使い道によって変わります。大きな選択肢は二つ。

断熱タイプ

石窯内、特に床に保持された熱が分散しないようにするために断熱素材で炉床より下部分を作ると、火室内を料理に適した温度にするのに必要な燃料と時間は少なくてすみますが、火を抜いたあと長時間オーブン調理する場合には、床の下からの放射熱も少なくなります。この設定は、ピザや直火料理のように火をくべ続けて石窯内部に広がる熱を継続させる場合には最適です。

床の下に使う断熱素材には色々ありますが、やわらかくてふわふわした素材は避けてください。頑丈な土台を作ることができなくなり、納得のいく床が作れなくなります。断熱耐火レンガ、CalSilボード(カルシウムケイ酸塩強力板)、セラミック繊維ボードなど・・バーミキュライトかパーライトと耐熱タイプのセメント(もし、極端な高温にしないのであれば普通のポートランドセメント)を6対1で混ぜたもの。混合比が濃くなるほど、断熱特性は低くなります。セメントの成分は、丈夫な基礎を作るのにぴったりな比率にしましょう。断熱素材の下地床を作ることで、高密度素材でできた床そのものに熱がとどまり、その厚さが保温の時間を決定することになります。

施工のための素材選びや、具体的な施工のマニュアルについては、各種の石窯DIY書籍に具体的事例とともに紹介されていますので、是非参考にしてみてください。

石窯業者は、自社製品の特徴として、加熱時間、つまり調理の準備が非常に短時間でできることを自慢する場合がありますが、このことは同時に、保温層が薄いために冷めるのも早いということを保証しているといえます。この点を理解しておきましょう。

蓄熱タイプ

蓄熱する素材を床下に配置し、薪を取り除いた後にも熱源となるようにすることが蓄熱タイプの特徴です。

高密度の素材で床の下に厚い層を作れば、窯そして床から熱をゆっくりと吸収し、火が取り去られたあとも熱を蓄えて、床の蓄熱力が発揮されるために、長時間安定して熱を供給することができるようになります。もちろん、石窯を希望の温度まで加熱する時間は長くなり、使用燃料も増えることになりますが、安定した熱を長時間長持ちさせることができ、一晩かけてローストしたり繰り返しパンを焼いたりするようなこともできます。

断熱素材は外殻にだけ使います

何が断熱素材で、なにが蓄熱素材であるのか、という分類を理解して下さい。石窯の外殻には、熱を逃がさないように断熱素材を貼ると良い石窯になります。しかし、燃焼室には蓄熱素材を使用をしてください。万が一、燃焼室に断熱素材を使うと、熱しにくく冷めやすいという最悪の石窯となります。

断熱素材にはいろいろありますが、共通していることは、微細な空気の小さなポケットがたくさんあって、素材を通して熱が逃げてしまうのを防いでいる点です。軽石のような素材を想像してください。昔は、炭、おがくず、コークス、灰、わら(泥のような結合剤をまぜてたもの)が使われていました。現在は、断熱耐火レンガ、セラミックレンガ(イソライトレンガなど)、バーミキュライト、セラミック繊維(ロケットが大気圏に入るときに保護するためにNASAが開発したもの)、などが広く使われています。

バーミキュライトやパーライトのような粘着性のない素材は、石窯のまわりを囲った空洞に流し入れて、雨や光から守るために蓋をしておきます。

p8

窯の素材として断熱材であるセラミックレンガ(イソライトブロック)を使った石窯商品事例(薪クラブ所有の他社製品)。蓄熱性が殆ど無いために性能が極めて低い。煙突の位置も火室頂上部に設けられていることから、炉内温度は一向に上がりません。

[重要です!]「耐火レンガ」と「耐火断熱レンガ(セラミックレンガ)」の違い

「耐火レンガ」は耐火性と蓄熱性のあるレンガで、ずっしり重く石窯の内張りや炉体そのものとして使用します。家庭用の小型石窯の場合は耐火レンガだけで完結するものがほとんどです。

石窯の炉体素材として「耐火断熱レンガ」を使用してはいけません。なぜなら、このレンガは断熱材ですから、石窯の中の熱が石窯に蓄熱されずに排気されてしまうからです。耐火断熱レンガは耐火レンガで組まれた炉心の周りを囲んで、石窯全体を保温するという用途に使います(注意!:「セラミックレンガ」、「イソライト」などと表記されているものが耐火断熱レンガです)。

世の中に販売されている石窯キットの中には炉材が「耐火断熱レンガ」のものがあります。炉体が断熱材であるためにいくら薪を焚いても炉内の温度は上昇せず、ほとんどの熱が排気されてしまいます。このような、断熱素材で作った石窯では本格ピッツァを焼くことはできません。薪を大量に投入しても炉内温度が充分に上がらないためです。

耐火コンクリートと耐火モルタルの違い

耐火コンクリート

アサヒキャスターという耐火コンクリートが有名です。左官屋さんの世界では「キャスタブル」とよばれたり、メーカーでは「不定形耐火物」などという、難解な呼び方をされたりします。商品によってスペックは異なりますが、1400度程度までの高温に耐えることができるコンクリートです。

耐火レンガを組み上げる際に固着させる用途に使ったり目地を埋めるなど、セメント・コンクリートと同じような使い方をします。加水して練って使用します。耐火モルタルと違って熱をかけなくても固まります。

耐火モルタル

一般のモルタル(セメントを砂と水で練ったもの)と違って加熱しないと固まらない物です。火室を構成するレンガを接着する際や目地用に使用します。大きな隙間を埋めたり、構造物そのものを製作する場合は耐火コンクリートを使用します。